「宇宙怪人」(江戸川乱歩)

さすがに今となっては噴飯ものです

「宇宙怪人」(江戸川乱歩)ポプラ社

アメリカで目撃された
空飛ぶ円盤は、
やがて日本へも飛来する。
円盤の中からは
トカゲとコウモリの
合いの子のような
宇宙怪人が現れ、
人々を恐怖に陥れる。
そして宇宙怪人は
ヴァイオリンの上手な
少女・平野ゆりかの
誘拐を企てる…。

江戸川乱歩
少年探偵団シリーズ第9作、
その名も「宇宙怪人」!
戦前の「少年探偵団」では
「黒い魔物」なる地味な怪物の登場で
終わっている怪人二十面相ですが、
今回は「宇宙怪人」。
一見爬虫類的ですが背中に翼を持ち、
指には水かきを備えているという
陸海空全てを縦横無尽に駆け回る
超怪物です。
しかも日本だけでなく
欧米や中共まで出没するという
ワールド・ワイドな活躍。
子どもの頃、胸を躍らせて
しゃぶりつくようにして
読んだ記憶がありますが、
さすがに今となっては噴飯ものです。

本作品の噴飯部分①
未だ発明されていない
超機械・人間ヘリコプターの登場

いきなりネタバレで
申し訳ないのですが、
本作品の場合かまわないでしょう。
宇宙怪人が空を飛ぶ仕掛けは、
背中に背負ったプロペラで
空を飛ぶ(ただし短時間!)というもの。
現代でもまだ発明されていない
超絶機械が、
戦後間もない時代に登場しています。
この一点だけでも
もはやSFと言ってもいいくらいです。

本作品の噴飯部分②
一人の美少女誘拐に
全力を挙げる宇宙怪人の目的は?

宇宙怪人来訪の目的は、
地球占領の布石だとか偵察だとか
人間体の標本採集だとか
語られる割には、
真っ先に取り組んだのは
ヴァイオリンの得意な
美少女の誘拐です。
自分の星に連れて行って
美しい音楽を聴かせるというのですが、
目的は別のところにあるのではと
勘ぐってしまいます(少年向け作品で
それはないでしょうが)。

本作品の噴飯部分③
二十面相の犯行目的は壮大な世界平和

いつもは「明智への挑戦」が
二十面相の犯行理由でしたが、
今回に限り壮大です。
「おれたちは、悪ものだ。
 だが、戦争というものは、
 おれたちの何百倍、何千倍も
 悪いことじゃないのか!」
「やつらの目を覚ますのには、
 宇宙の星の世界から、
 大軍勢がせめよせてくることを、
 さとらせてやればいい。」

壮大なスケールで描かれている割には、
トリック等は
つまらないものばかりですが(失礼!)、
それはいたしかたありません。
インフレーションを
起こしたかのような
二十面相の生み出す化け物のスケールは
本作品をピークに、
あとは身の丈に合った
小規模かつ奇天烈なものへと
スケールダウンしていきます。
難しいことは考えず、
少年の心で思いきり楽しみましょう。

※1980年代にヒットした
 アメリカのTVドラマ
 「V ビジター」でも、侵略者は
 ヒト型爬虫類宇宙人でした。
 もしや「V」の制作者は乱歩を
 ぱくっていた!?

(2020.6.7)

Christian PlassによるPixabayからの画像

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